映像音楽とアンダースコアの重要性

アンダースコア(underscore)、一般的に日本ではアンダーバーやアンダーラインの意味で使われることが多い。

英和辞書を調べてみると「背景音楽を与える」といった少々意味不明な訳もあったりする。しかし映像音楽の世界では使い方が違っていて、「フルミックス」に対して「アンダースコア」という物が存在する。つまり完成された曲に対して「何か楽器を抜く」という作業をして別の価値観を曲に与えるのである。「背景音楽」、テレビや映画等の映像に付随する音楽を作る場合はよく使うテクニックです。

  • 一番簡単な例がメロディラインを抜いちゃう事。

これ、もちろん音楽だけを聴いていると物足りないが「映像が語る」部分を浮き彫りに出来る効果がある。特にドラマではセリフがあるのでアンダースコアの方が多用される。もちろんメロディラインの質にもよるけど。

  • 次に簡単なのがリズム隊を抜いちゃう事。

ビート感のある曲はリズム隊をミュートするとBPMは変わっていませんが体感としてスローに聴こえます。どんな種類の映像でも編集すると自然と「編集のテンポ感」が生まれます。使いたい曲がそれにマッチしない場合はそうやってバリエーションを作ったりします。

他にもメロディーだけを使ったりと様々なパターンが存在しますが、要するにフルミックスに対して楽器のバランスを抜き差しすることによって曲を「抽象化」して自分の好みの「映像との距離感」を作るんですね。音楽を「抽象化」するなんて言うと難しく感じるかもしれないが要するにミックスをスカスカにして映像にフォーカスを当てるって訳です。これがつまり「アンダースコア」というモノ。

面白い事に選曲家は上記のようなテクニックを自然と身につけるのですが、作曲家やアレンジャーはなかなか出来ないという事実です。自分は選曲も作曲もやるので両方の作業の違和感というか、使う「脳」が違うという感覚に陥ります。作曲家は「曲」に集中し、選曲家はその「曲」を道具に作品全体に集中する。「曲を完成する」という事と、映像のために「音を抽象化する」作業は一人で両立出来ない。こんなことを考えながらアレンジをしているとある種のジレンマに囚われます。

いまちょうど、アンダースコアを含め20トラックを作り終えたところ。

今回も使いやすいのは「アンダースコア」の方だったりする。

 

 

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